コラム No.4【2012.5.3】

Landa Corporation Nanographic Printing Pressの印刷機構

drupa開幕前日、5月2日にプレス向けにBenny LandaがNanographic Printing Pressの印刷機構について、インタビュー形式で答えている。今回のdrupaで最も注目されている新技術であるが、これまでその適性や機能、スペックなどは発表されてきたものの、印刷機構については伏せられており、私のところにも多くの質問が寄せられていた。サイトのコラムとして記載する内容ではないかもしれないが、注目度の高さから、その機構について分かりやすく解説してみたい。

本技術は、Landaにより開発されたNanoInkと呼ばれる液体のインクが利用されることは発表されていた。出力解像度が600dpiもしくは1200dpiということで、インクジェットに近い印刷方式であることが予想されていた。

インタビューの内容より、その印刷方式はインクジェット方式とIndigo(HP Indigo)の印刷方式を併用したものであることがわかる。NanoInkは、ヘッドからインクジェット方式同様に吐出されるが、その先は印刷媒体ではなく、加熱されたベルト状の中間転写体(ブランケット)となっている。各色を全てブランケット上で重ね、さらに温風で乾燥させた後、1回転写で印刷媒体へと圧着することで印刷が終了するのである。ブランケット上にNanoInkが重ねられて乾燥された際には、インクから水分が除去され、イメージはフィルム状(英文ではプラスチック状と表現されている)になり、これを印刷媒体に1回で圧着するため、紙、軟包装材など様々な印刷媒体への印刷が可能となっている。すなわち、インクの吐出部分はインクジェット方式であり、転写部分はIndigo方式(Digital Offset Technology)が採用されて組み合わされているものであると理解できる。Landaはインタビューの中でインクジェットとは異なるという点を強調している。その違いは印刷媒体上に直接インクを吹き付けないことにある。

プリントヘッドは600dpiのインクジェット方式と良く似たものが利用されているとのことである。ただしNanoInkを利用するためにいくつかの改良が施されているとも話している。全8本のラインヘッドを備えることで、600dpiでは最大8色までの印刷を可能としている。また、CMYK各色にそれぞれ2本ずつのヘッドを割り当てることで(CCMMYYKK)、4色・1200dpi(解像度2倍)の構成や、4色・600dpi・2倍速などの構成で利用可能となる。特色を含めたカラーインクに加え、クリアやニスなどの利用についても可能性はあるとも答えている。

drupa2012には、サイズの異なる実機が枚葉方式3機種(B1、B2、B3サイズ)、輪転方式3機種が出展される。枚葉方式の用紙搬送機構は、先日提携が発表された小森コーポレーションが受託生産を行っているとのことである。NanoInkおよびブランケットについてはLanda Corporationの自社生産にて提供される。同機のメイン市場は、商業印刷、パッケージ印刷、シールラベル印刷などの各市場であり、さらに大きなサイズ(大判インクジェットの領域であるサイン・ディスプレイ分野)については、ブランケットを利用する機構のため、容易ではないとのことであった。

印刷媒体への圧着による転写機構であるが、実は1点まだ良く分からない点がある。Indigoも同様であったが、印刷媒体への定着性の問題である。Indigoの場合はプレコート(プライミング)を行うことで定着強度を高めることが行われているが、NanoInkではプレコートなしでもスクラッチ適性などに高い強度を持つという。ここにNanoInkの不思議があるのかもしれない。Landaはインタビューの中で、Nanoレベルの材料について興味深い発言をしている、簡単に訳してみると、「Nano材料は、様々な市場で利用されているが、こうした材料は熱を加えることなどでその機能特性を大きく変化させることができる」というものである。ブランケット上で加熱された際になど、印刷プロセスの中で。NanoInkの機能特性が変化し、印刷媒体と密着するような何かが起きるのかもしれない。この疑問は実際に会場で確認してみたい。

また、NanoInkはナノレベルに分散されたnano pigmentがベースとなっており、有機溶剤などを含まない水性インクである。この点から環境に対して非常に配慮されたものであると言える。さらに、NanoInkは濃縮された形でボトルに入れられてクライアントには提供されるようである。これを水で希釈して印刷に利用することになる。印刷機内にde-ION(イオン除去)機構を内蔵しており、インクを利用することができるようになるとのことである。こうした運用により、運送時の二酸化炭素の排出を抑制するとともに、廃棄物の抑制にも繋がる環境に優しい仕組みを構築しているとのことである。

商用機のリリースは2013年を予定しており、現在抱える課題としては傷などが挙げられている。また、本技術は広くパートナーシップを結びながら早期に市場に提供できる環境を整えていくとのことである。現在は小森コーポレーション、manrolandとの提携が発表されているが、これからも拡大を続けていく様子である。この引き合いに出されたのがXeroxである。XeroxはXerographyを開発(発明)したが、他社が参入し業界標準となるまでには15年を要したというのである。Landaは本技術を業界標準とするために今後多くのメーカーなどとの協業を模索すると答えている。

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