コラム No.2【2012.5.1】

新たなプレイヤーの出現で混迷を極めるメーカー間の提携・協業

ここ10年、メーカー間の合併、提携などが重ねて行われてきた。製品のOEM提供や、互いの製品をクロスセールスするなど様々な形態で発表がなされてきたが、drupa2012を迎えて本格的な共同開発など、製品化にたどり着いたと言えるだろう。drupa開催直前には、今回注目を集めるLanda Corporationと小森コーポレーションとの提携が発表され、こうした提携や協業も混沌としてきた感がある。

大手企業が名を連ねるオフセット印刷機メーカーとデジタル印刷機メーカーとの提携を挙げてみよう。小森コーポレーションはコニカミノルタと提携し、コニカミノルタのbizhub PRESSシリーズをOEM販売するとともに、枚葉B2インクジェット印刷機を共同開発している。また、ハイデルベルグとリコーでは、ハイデルベルグがリコーのRICOH Proシリーズを、自社のPrinectワークフローからコントロール可能なLinoprint CブランドでOEM販売する。マンローランドとオセ(キヤノン)も提携を行っているが、マンローランドが会社分割により企業再生を行っていることから、現在大きな動きは出ていない。さらに、リョービとミヤコシが高速電子写真デジタルプレスを共同開発し、KBAとRR Donnelleyも高速連帳インクジェットの開発を共同で行っている。

そして今回、Landa Corporationと小森コーポレーションとの提携である。Landaとしては初めての他メーカーとの協業の発表となる。リリースから見ると、Landa Nanographic Printingプレスの用紙搬送系部分を小森コーポレーションが製造しているようであり、今後はLandaより小森コーポレーションに対して、デジタル印刷システムを提供していくことが記載されている。Landaの印刷システムがどういった技術を利用しているかは、現在のところ明確になっていないが、搬送系を提供している小森コーポレーションは知っているのかもしれない。そして、その上で将来のデジタル印刷技術として、両社が提携を行うということから見ると、Landaのシステムは、小森コーポレーションから見ても魅力的な技術を持っていることなのかもしれない。なんかワクワクする。

さて、話がそれてしまったが、こうした提携や協業の中には様々な形がある。製品のOEM販売などは明確なものであるが、例えば搬送系などの一部技術を提供している場合などは、発表されるケースとそうでないケースがある。後者のようなケースでは、複数のメーカーとの間で技術提携などが行われており、その提携関係が非常に複雑になっていることが多い。当事者となっているメーカーでは明確なスタンスがあるのであろうが、第三者的に見ると、今後どのような形に収束していのかが見えにくい。

今回の小森コーポレーションと、コニカミノルタおよびLanda Corporationとの間の発表も私の目には同じように映る。将来のデジタル印刷技術への投資判断であるという面では一貫しているものの、コニカミノルタと共同開発したB2インクジェットとLandaが発表するB2(B1およびB3もある)枚葉デジタル印刷機はどのように棲み分けていくのであろうか。いずれも販売は決定していないため、まだこれから検討するという段階なのであろうが、双方を取り扱うのか、どちらか一方に収束するのか、今後の動向は興味深い。

ご存知の方も多いが、搬送技術の提供という意味では、リョービも多くのメーカーと提携している。富士フイルムのJet Press 720の搬送系は同社製であり、また自社のオフセット印刷機にコダックProsperヘッドを搭載したハイブリッド印刷機を販売している。さらに今回はミヤコシと電子写真方式の枚葉機を共同開発したとの発表である。どの製品も市場に数多く流通すれば、同社技術の販売につながるのであるが、果たして競合するような場合はどうなるのだろうか。自社ブランドでもハイブリッド印刷機を販売している同社としては非常に難しいのではなかろうか。まだまだ混迷を極めていると言わざるを得ない。

また、技術提携が何と儚いものかと感じた例もある。コニカミノルタとオセとの提携である。クロスセールスばかりでなく技術提携、さらには将来のデジタル印刷機の共同開発までを視野に入れた両社の提携は、キヤノンのオセ買収により消滅することになった。自由競争社会の中では、資本を含めた様々なパワーバランスの中で物事が動くことを目の当たりにさせられたものである。

今後はどんなことが起こっていくのであろうか。まだまだメーカー間、技術を含めた提携などは混沌としている。drupa2012で発表された技術、システムばかりでなく、キャスティングボードを握っていくメーカーがあるのか、見所は尽きない。

Copyright(c) 2011 Value Machine International Co,ltd. All Rights Reserved.