印刷会社を中心に、デザイン会社、広告代理店などのクリエイティブ関連企業の「新商品・事業開発」に携わらせてもらう機会が多い。クリエイティブ関連企業は、どこも非常にユニークな強みをもっており、その強みを“掛け算”し、選出されたプロジェクトメンバーとともにお客様が「買える状態」に組み立てていく(商品化・サービス化していく)プロセスは、困難あり、飛び上がるほどの喜びありでとてもやりがいがある。お客様の反応が増え売上という成果がでた際はもちろんだが、最もやりがいを感じるのは、「人の成長」を感じられた時だ。
通常3~5人、多くとも10人程度のメンバーが選出され新商品・サービス開発プロジェクトを進めていく。そこには営業や製造現場、時に経理や総務の方が選出される。メンバーはそれぞれの立ち位置から意見やアイデアを出していくことから、ひとりでは到底思いつかない、セオリーだけでは届かない発想が生まれることもある。ただ、その反面、各部署の環境や繁忙期の違いから、意見が対立することもあるし、特にスタート当初は、ミーティングの場ではスムーズに、何事もなく進んでみえても、ふたを開けてみると何も進んでいない、誰もが他人事のふるまい、なんてこともプロジェクト“あるある”だ。
月1回~2回のコンサルテーションの場では私がファシリテーターとして場を創っていく。私なりのノウハウ「引き出す」「さばく」「つなげる」を繰り返し(詳細は別の機会に)、論点からずれないよう進めていくわけだが、問題はその間、私が見えていないインターバルだ。グループウエアをセッティングしても何も共有されず、むしろ“やぶへび”にならないよう大人しくしていることもあるだろう(笑)。私の経験でいうと、その理由は主に3つに分けられる。①やりたくない ②できない ③わからない の3つ。①の「やりたくない」は、興味がない、自分の苦手な分野、余計な仕事をしたくない等。②の「できない」は、忙しすぎてうちの部署からは人が出せない、過去にやったが何も残らずにおわった等。全てその元には「なぜ今このプロジェクトをやらないといけないのか?」が腹落ちしていないことにある。上司に説明そこそこに、「やるぞ!」と招集されたなどは典型だ。リーダーはここに十分時間をかける必要がある。③の「わからない」は、実は議論するうえでベースとなる知識がないために、ついていけない、やる気がなくなるといった悪循環に陥っているケースが多い。どれもファシリテーションスキルでいえば、「仕込み」が足りていない状態である。私にも経験がある。
新商品・新事業開発のプロジェクトは様々なフレームワークを活用しながらマーケティングスキルを学んでもらう。はじめは、これまで学んだことがなく戸惑うメンバーもいるが、そこはセッションの中で学習すればなんどかなる。ただ、前述したようなインターバルにおける進捗とやる気の管理、その時々に出てくる問題解決へのアプローチは、メンバー内に人が育たなければなんともし難い。声が大きくなくとも、カリスマ性がなくてもいい、メンバーの話を引き出し、問題意識を共有し、合意形成をしていくリーダーの存在が必要となる。社長やマネージャーが「このままでは将来がないぞ」と危機感を煽ってもなかなか進まないのが現実。目標達成を続ける企業の共通点として、メンバー内にファシリテーションリーダーがいることがあるのは間違いない。“いる”のではなく、プロジェクトを通じて“育つ”、もっといえば“育てる”のだ。
「人は育てないと育たない」。人材開発でよく言われる言葉が身に染みる。とはいえ、単発の研修やyoutube動画では身につかないのが「コミュニケーション」「ファシリテーション」という正体不明の成果が見えにくい分野。そのために私自身も商品開発、事業開発に直接関係ない「コミュニケーション学」、中でも「ファシリテーションスキル」の補講をする機会も非常に増えている。
ある会社では営業成績がいまいちの“リーダーキャラ”からは程遠い若手が、積極的にメンバーに問いかけを行いはじめたり、ミーティング内で合意形成を促したりと、チームを動かし始めることがあった。それにつれて個人の営業成績もあがってきたことには驚かされた。またある会社では、デジタル印刷機のオペレターさんが力をつけてチームを代表して成果発表してくれるようになり、今やマーケティング室長を兼任して新事業開発リーダーに抜擢されている。こうした「人の変化」が見られた会社は、組織自体も変化していく可能性が非常に高い。新事業開発を実践していく場は商品のみならず「人材を開発する絶好の場」といえるだろう。
新たに公益社団法人日本印刷技術協会さん(JAGAT)と開講する講座は、これまでの新ビジネス開発プログラムに加え、コミュニケーション学、ファシリテーションスキルなどを盛り込んだより人材開発に重点を置いた内容となっている。将来のリーダーとご一緒する日が楽しみだ。