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drupa2024備忘メモ

公式発表によれば、drupa2024の来場者数は17万人とのことであった。
大きなニュースとなったのは、8年前のdrupa2016の来場者数26万人から、30%以上も減少したという点である。
私もいくつかの展示会で事務局業務など担当させていただいているが、公式に発表される来場者数については、実際の数字よりも少し高めに盛って発表されることも多い。そのため、前回の26万人から減少したことは事実としても、20万人くらいで発表されるものと思っていたため、17万人という公式発表の数字は個人的にも驚きであった。
本格的にデジタル印刷機が登場した2000年のdrupaでは45万人が来場したということであるから、それと比較すれば半分以下ということになり、そのインパクトは大きいということになるであろう。1990年台からインターネットは高速・大量のデータ通信が可能となり、常時接続が可能なスマートフォンが普及を続ける中、印刷産業はその市場規模を縮小してきており、世界最大の印刷機材展であるdrupaにおいてもこうした影響から逃れることはできなかったものと思われる。

  

私は現地での仕事の関係で、初日の夕方から10日間、会場を訪れたが、来場者数が少ないことは一目でわかる状況であった。
プレス向けの大きな発表の多くは、開催初日に行われるため、初日から3日間くらいはある程度の来場者があったが、それを過ぎると日に日に来場者が減少していき、後半は本当に人が少なかった印象である。国内からは、後半に会場を訪問するスケジュールを組まれていたツアーも多かったことから、閑散とした会場に驚かれた方も多かったのではなかろうか。
一方、来場者が少なかったとはいえ、デジタルホールと呼ばれるホール8a、8bと、ホール1(ハイデルベルグ)、ホール17(HP)では、終日多くの来場者でにぎわっており、今回のdrupaのキーワードとして出されていた、「think digital」、「be sustainable」というテーマに来場者の興味が集まっていたものと見ることができる。

  

この来場者数を出展メーカーはどのように見ているのであろうか。
drupa終了後、いくつかの大手出展メーカーの方をお話する機会をいただいたことから、来場者の減少についてストレートに訊いてみたところ、意外にも各社からは後ろ向きの回答は少なかったのである。
drupaはいわゆるExhibition(展示会や展覧会)というよりむしろ、Trade Showという位置付けが強くなっている。展示会や展覧会では、より多くの方に展示内容を見ていただくことを重要視するため、来場者が多いことがイベントとしての成果となるが、Trade Showではどのくらい販売したかということが重視されることになる。1台1億円を超えるデジタル印刷機を100台以上販売したメーカーや、顧客と数年にわたるパートナーシップ契約を締結し、数十台のデジタル印刷機を出荷する予定であるメーカーもあり、今回来場者数は減少したものの、出展メーカーにおいては商取引としての成果は出たということであろう。
もちろん会場で取り交わしているのは注文書ではなく、覚書に近いものであると言われる。最新の印刷機や加工機については、受注生産されるものも多く、販売の約束をしたからといって、すぐに全て納入することはできない。また、システムのバージョンアップや、メーカー、顧客の双方の状況なども時間とともに変わることから、会場で取り交わされた覚書の内容全てが販売につながるわけではないが、購入を前提とした顧客を獲得できることに大きな意味がある。

  

そういった意味では、来場者数は減少したものの、一定の成果があったdrupaと言えるのではなかろうか。個人的に7回目のdrupaでも、その熱気やワクワクする気持ちは全く変わらないものであった。
次回2028年にも期待したい。