無料相談 受付中 ホームに
戻る

drupa2024備忘メモ

各地で開催される印刷機材展の中でもdrupaならではだと感じているのが、システムのパネルをオープンして内部機構を見せるという展示の方法である。
今回もLanda S11、HPのIndigo V12など大型のデジタル印刷機がフロントパネルを開け、複雑に設計、システム化された印刷機の内部を来場者に向けて公開していた。もちろんシステムの機構や安定した稼働のため、また来場者への安全に配慮して、デモンストレーション中はクローズするケースも見られるが、どういった機構で稼働しているのかを見ることができることは、技術を追ってきた者としては、本当に面白く、ワクワクする瞬間でもある。デジタル印刷機でいえば、メディアの搬送の方法、イメージングの仕組みや転写、乾燥のプロセスなど、各社が技術面で多くの工夫を行っていることを見ることができるのである。

前面パネルをオープンしたLanda S11                               

   

これまで、こうした内部機構を見せるという展示を国内メーカーが行うことは少なかったため、今回、RICOHがB2枚葉インクジェット印刷機であるPro Z75、輪転インクジェット印刷機VC80000の2機種のフロントパネルを開放していたことはとても印象的であった。特に枚葉モデルであるPro Z75は、パネルを全て開けたまま印刷のデモンストレーションまでを行っており、内部を見ようと多くの来場者を集めていた。

RICOH Pro Z75はパネルをオープンしたまま実演を行った

   

また、とても興味深いのは、こうした内部機構の公開が、来場者ばかりでなく、競合メーカーに対しても同じように行われていることであろう。
ちょうど私がデジタルラベル印刷機HP Indigo V12を見ているときに、この分野でHPの競合になるであろうメーカーの技術者3名が横にいて、内部の写真や動画を熱心に撮影していたのである。3名ともネームプレートを付けたままで社名を隠すことなどしていないため、HPの説明員も競合メーカーが見ていることに気付いていたはずだが、横で笑顔で質問にも答えていた。もちろん自社の技術に自信を持っている、あるいはキーテクノロジーは特許でおさえていることなのかもしれないが、ここまでオープンに内部を見ることができるというのはdrupaの醍醐味であるといえる。

競合メーカーに対しても内部を公開するHP Indigo V12

   

一方で隠すというのも面白い。
drupaでは数年先を目指した新たな技術やシステムが出展されるため、内部を見せずに、そのコンセプトや考え方が示されることも多い。パッケージ製造システムを出展したBOBSTでは、BOBST Packaging Conceptとして、全体をパネルで囲った印刷システムをメインステージ前に展示したが、隠されると内部を見たくなるものである。スモーク処理された窓から目を凝らして内部を見ると、フレキソ印刷とインクジェットのモジュールが内蔵されたコンビネーションプレスのようであるが、詳細まではわからず期待が膨らんでいくのである。

BOBST Packaging Conceptモデル

   

このように、全部見せるのも隠すのも、そのショー的な要素を含めて、drupaはとても魅力的な場であるといえるのではないだろうか。